アトックスなど福島復興のあゆみと今後の取り組み

2011年3月に発生した東日本大震災は、我が国でも例をみないほどのすさまじい自然災害でしたが、地震や津波だけではなく、稼働中の原子炉が損傷してさまざまな核種が外部に放出されるという、原子力災害をともなっていたことが大きな特徴となっています。
これにともなって福島県内では16万4,000人ほどの人々が避難を余儀なくされ、大きな不安と苦悩のなかでの生活を強いられたことは忘れることができません。

避難だけにとどまらない課題

避難だけにとどまらない課題として、県内全土において風評被害が生じて農業や水産業をはじめとするさまざまな産業が打撃を受けたばかりか、避難先での心ない中傷などもあったことが挙げられます。
このような環境のなかで行われてきた福島復興ですが、実は福島県でも災害発生から5か月後には原子力に依存しない社会づくりにより福島復興を実現するための復興ビジョンを策定し、これを上位として下位計画の策定を行うとともに、計画にもとづいて事業を着々と進めてきたいきさつがあります。
もちろん地元の福島県だけではなく、国のほうでも福島復興再生基本方針を策定していますので、これらをいわば車の両輪として、相互の連携を図りながらの取り組みであったともいえます。
現在までの間には、福島をターゲットとした台風や地震などの自然災害もあいかわらず発生していますし、新型感染症のようなウイルス性疾患の拡大などの特殊な事情もありました。

空間線量率は大幅に低下

当初の東日本大震災による被災からの復興に加えて、これらの新しい課題にも着実に対応していかなければならず、他の地域と比べてみれば二重にも三重にも困難があったところです。
しかしそのような困難を乗り越えて、現在までには放射性物質の防除作業などで除去した結果、空間線量率は大幅に低下して住み慣れた地域にまた戻って生活をすることもできるようになりましたし、実際に法律にもとづく避難指示区域も福島県全体からみればわずかに2パーセント台の面積にまで縮小しています。
災害復旧に関しても、津波でほとんどの建物が流されてしまった浅見川流域などでは築堤とともにレベルを嵩上げした道路や防災緑地が整備され、ふたたび被災したとしても人命が守られるような対策が講じられています。
これに限らず県内の各地で工事が急ピッチで行われ、インフラ面に関してはかなりの水準まで回復したといえるでしょう。

南相馬市や会津若松市などで相応のキャパシティをもつ集合住宅が完成

復興公営住宅の整備などもハード面での整備の一例で、南相馬市や会津若松市などで相応のキャパシティをもつ集合住宅が完成しています。
住宅だけがあっても住みやすい環境がなければ人口が定着しないという問題にも対応し、原子力発電所に近い楢葉町や富岡町などでは商店街として機能するショッピングモール、病気やけがの際に遠くまで出向かなくても即時に診療できる医療センター附属病院や診療所などが開設されました。
交通インフラもこうした生活を支える重要なアイテムのひとつであり、八木沢トンネルの全面開通や常磐線・常磐自動車道の全線開通などもここに掲げておくことができるでしょう。
特に高速道路に関しては、ほかの類似の道路と比較するとインターチェンジの数が多く、いざというときの避難にも重点を置いていることがわかります。

県内の製造品出荷額や農業産出額も回復傾向

こうした取り組みによって県内の製造品出荷額や農業産出額も回復傾向にあります。
いまだに復興の途上といえる課題ももちろん存在します。
たとえば避難者数については当初と比較すれば激減しているものの、県内と県外あわせて3万5,000人程度が現状では避難民として残っています。
空間線量率が減少してせっかく避難指示が解除された地域についても、もとの住民が戻ってきた割合が高い市町村では90パーセントもの居住率となっている反面、ほとんど進んでいない市町村では10パーセントすら切ってしまっていることがあります。
製造品出荷額についても福島県内全体では力強く回復しているものの、原子力発電所の所在地域である双葉郡に限ってみれば震災前の2割程度しか回復していないなど、福島復興とはいっても実は地域格差が大きいことがうかがえます。
農業についても風評被害をいまだに払拭できてはおらず、ももやなしなどの主要な産品の全国平均の価格帯と福島産の価格帯を比較してみれば、その差が大きいことは一目瞭然です。

まとめ

これらの諸課題を踏まえて、今後の取り組みの方向性としては、まずは原子力発電所の廃炉を着実に進め、原子力関連の被害からの復興を進めるとともに、原子力に限らず複合災害からの福島全体としての復興を進める必要があります。
そこで今後は特定復興再生拠点区域を中心として居住機能、生活利便施設の誘導を進めるとともに、交通インフラについても引き続き整備していくことになっています。
生活面では特に浜通り地方の医療体制の貧弱さがめだつため、医療関連の施設整備も進められます。
産業面では興官民合同チームなどによる個別事業者への訪問や支援が行われるとともに、ベンチャー企業の育成なども目標のひとつになっています。

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