フィンテックが社会にもたらす影響

フィンテックとは

フィンテックは最近盛んに新聞紙上その他のメディアにおいて用いられている時事用語のひとつですが、これは英語でいえばファイナンスとなる金融と、技術を指すテクノロジーを組み合わせた造語です。

この言葉からも明らかのように、金融と情報技術を組み合わせた従来にはない革新的なサービスを意味するものと考えておけばよいでしょう。

すでに大手のコンビニエンスストアなどを中心として広まっているスマートフォンを使った店頭での代金の決済サービスなどは、このフィンテックのひとつの典型的な事例といえます。

フィンテックという用語自体は最近になってからにわかに登場したものではなく、実は2000年代の前半からアメリカ合衆国では使われていましたが、リーマンショックによる混乱と既存勢力の没落や再編を経て、スマートフォンをはじめとするインターネット端末や人工知能などの情報処理技術を活用して、新しいタイプのサービスを提供する金融ベンチャーが生まれる時代となりました。

そこでようやく時代が先行して進んでいた現実に追いついたものということもできます。

フィンテックシステム開発コンテスト「フィンテックアワード2019」FintechAward2019も参考

フィンテックは世の中にさまざまなインパクトをもたらすものと期待されていますが、そのなかでも大きなものとして経済のグローバル化が挙げられます。

たとえばスマートフォンはひとり日本だけ普及しているものではなく、実はこれまで発展途上国といわれていた世界にまで広がりをみせています。

もちろんアメリカ合衆国をはじめ、ドイツやフランス、イギリスなどのヨーロッパ各国での普及はいうまでもないことであり、世界最大の人口を抱え日本を追い抜いて急速な発展を続けている中国などは、まさにこうした新しい技術の恩恵を最大限に受けている国といってもよいでしょう。

 

スマートフォンの普及がもたらしたこと

インターネットにどこでも接続できるスマートフォンの普及がもたらしたことといえば、銀行をはじめとした金融機関やATMなどの物理的なインフラが十分に整備されていない地域であっても、スマートフォンひとつあるだけで簡単に金融サービスにアクセスできる社会の到来といえます。

またこれは物理的なアクセス手段が整ったということだけを意味してはおらず、多様な人々に金融サービスの門戸を開いたという意味でも注目されるものです。

たとえばこれまでは与信管理の面から銀行を通じた消費貸借、代金の決済などのサービスを事実上制限されていた人たちも、一人ひとりの行動の膨大なデータを抽象化したいわゆるビッグデータの活用、あるいは人間に代わって定型・非定形の業務を瞬時に処理することができる人工知能の活用などによって、気軽に金融サービスにアクセスする余地が生まれることになりました。

これらはすでにさまざまなインフラや制度が存在している新興国よりも、むしろこれまでの発展途上国が新興国と同じ土俵にいとも容易に立つことができるようになり、一気にグローバル化が進むという点で、これまでにない大きな変化といえます。

グローバル化というのはよりマクロの世界での意味合いが強いものですが、フィンテックがもたらすのは実はそれだけではなく、パーソナル化というミクロの世界にも及んでいます。

グローバル化とパーソナル化というのは一見するとベクトルの向きが反対方向といえますが、それが同時に進んでいることがなかなか興味深い点といえます。

スマートフォンというのは会社に備え付けられているパソコンなどのように、大勢の人間が同じものを共有するしくみではなく、一人に対して一台というのが原則的な使われ方となっています。

そのためもともと情報を個人と関連付けやすいという特性がありました。

 

フィンテックは社会にもたらすインパクトが大きい

このような特性をもとにして、スマートフォンから送信されたデータを人工知能などを使って分析し、それぞれのユーザーにとって最適な商品やサービスを提示することが可能となっています。

これはサービスを提供している金融機関、その他の会社にとって販売促進につながるという意味でのメリットがありますし、ユーザーのほうでもいちいちみずから探さなくても適切な商品やサービスの選択肢が示されるというメリットがあることから、どちらかが一方的な損得を押し付けられる関係ではありません。

したがって今後ともこのような流れが進むことに対して、技術的なボトルネックなどを除いては、ほとんど何ら障害はないことから、方向性はまず変わらないものとみられます。

このようにフィンテックは社会にもたらすインパクトが大きいものですが、それは金融の世界に限定されるものではありません。

この流れは手持ちのスマートフォンにアプリケーションをダウンロードすることなどによって成立していますが、アプリの配布主体はかならずしも銀行だけではないことをみても明らかです。

たとえば諸外国ではタクシーに代わる自家用車のライドシェアなどがアプリを使って成立しているケースがあり、このようなシェアリングエコノミーの進化にとっても有効といえます。